第1話

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 俺は社会科の哲学倫理のレポートの提出を来週に控えて、その課題図書を買いに本屋に行ってきたところだ。そこで18禁本コーナーから飛び出してきたクラスメートの前島と鉢合わせしてびっくりというわけだったんだが、人は見かけによらないとは本当だなあ。  しかし今はどうやってレポートを書き上げるかの方が問題だ。自慢じゃないけど、俺は学校の成績は最下位クラス。今度のレポートで合格点もらえなかったら留年の可能性だって出てくる。  十年前までは出席日数さえ足りてりゃ義務教育で留年はなかったそうだから、ほんと損な時代に生まれちまったよ。なんでも昔大阪都を作った日本一新の会というのが政権を取ってから今の留年もありの制度に学校が変わっちまったらしい。  俺は前島の事が頭のどこかに引っかかる感じを持ちながら、今夜中に「涼宮ハレルヤの憂鬱」を読み終えないと、と心配しながら家への夜道を急いだ。  翌日は朝からうだるような暑さだった。ま、夏休みが近いと思えば悪い事じゃないんだが、休みの前に何本も授業でレポートを提出しなきゃならないし、それに年が明ければ高校受験だから、俺の周りは浮かれていられる気分じゃなさそうだ。  一時限目は俺の一番苦手な現代国語の授業だった。中年オヤジのセンコーの声が教室中に響く。
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