回想列車

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言っている意味がわからない というかこの猫はちょくちょく僕の心を読んでくる 「君は顔に出やすいのさ。ほら、街に近づいてきたぞ」 そう言われ窓の外をみるとさっきまで遠くにあった街が目の前にあった 僕は少し腰が浮き立ち前のめりの体制に自然となった その時 僕の中で何かが弾けるような感覚が広がる 心が輝き身体は熱を帯び まるで子供が探していた宝物を見つけたような そんな感情が沸き上がる 少しずつ近づく星 ここからだと街の全体図が見えるが 街…いや星みたいだ 丸い星から高いビルや家が飛び出ている 逆さになっている家はどうなっているんだろうか 暫くすると電車は街の目の前まで来たが一瞬速度が緩んだだけで街には止まらず通りすぎてしまった 「とまらないのか?」 そう言うと猫はすぐさま答えた 「降りるものも乗るものもなかったからな」 なるほど、納得 すっと腰の力を抜きまた前の僕を取り戻す 心では少し残念な気がした 電車は カランコロン カランコロン といつものように走る
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