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「ん…。出ない…出ない…。櫂が出てくれない………」
櫂の笑顔を見たことがないと、思い当たった翼。
彼は、櫂を連れ出すべく部屋の前に来ていた。
しかし。
泣きつかれて居留守を通している櫂が出てくれないことに
理由を知らない翼は落ち込み、玄関の扉を見つめていた。
「……櫂………」
翼が櫂の名前を呟いた瞬間。
「…………ぇ…………?」
翼の心臓スレスレを貫いたものが。
「………兄さんの、仇………」
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