闇の中の道標

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必要以上にアイツに近付いてはいけない。 手放せなくなる。辛くなるから。……アイツを、失うことが。 「…………これ以上…、俺の中に入ってくるな…………っ」 櫂は自分の体を抱きしめて、震えを止めようとするが中々止まらなかった。 そのうち、櫂の瞳から一滴の雫が零れて。 「…………翼…、俺はお前を失いたくない」 櫂の頬を伝う幾つもの雫は、枕に染み込んでいく。 櫂はもう気付いていた。 翼の存在が、自分の中で大きくなりつつあることを。 ――櫂の嗚咽だけが、部屋に響いていた。
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