一章

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「おーよ、何だかんだ言って、あいつらが一番楽だわ」 と言って、微笑みかけ、あっと何かを思いついたように短くつぶやくと、私の頭に手を乗せて 「もちろんお前は一番好きだぜ?」 と言った。 「――――!!」 突然のことに私は思わず固まって「もうっ!!」と拗ねたように言い、先輩よりも先を歩いた。 多分、私の顔は真っ赤だろう。 いやこれは夏の暑さからくるものだろうと、自分に言い聞かせ、クルリと先輩へ振り向いた。 「私は先輩が世界で一番格好いいと思いますよ!!」 と、言って見せると、先輩は驚いたような表情を見せると、すぐに左手で口元を押さえた。 「いきなり何のツンデレ?!」 「さっきの仕返しですよ」 ――禍福は糾える縄の如し―― 幸福と不幸は寄り合わせた縄のように表裏一体の存在。 幸せな時間を過ごしていたときと一変し、家に着いたとき、私は人生最大の不幸に見舞れることとなった
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