序章

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「あ、抄華帰るのー?」 「うん!ばいばーい」 ひらひらと手を揺らし、2-8の教室を後にした私は、隣の1棟に繋がる渡り廊下を歩いていた。 蝉のうるさいほどの鳴き声。 季節はもうすぐ夏休みを迎えるところだった。 夏の暑さが苦手な私は、この暑さはまだまだ続くと考えるだけで気が滅入る。 そんな中、1棟にたどり着きドアを開けると中から涼しい空気が私の肌をなで、外に冷気は逃げていく。 慌ててドアを閉め、向かった先は3-5の教室。 3年生は受験生ということもあって、受験モードのピリピリとした空気が漂って… …いなかった。 まぁいつもの事、しかし、お気楽なのかは知らないが、少しは受験生としての自覚を持ったらどうだ、と心の中で毒づく今日のこの頃。 私は教室のドアを開けて大好きなあの人の名前を呼ぶ。
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