0人が本棚に入れています
本棚に追加
〈卒業〉
「今日で終わり…か。」
僕は、中学時代の最後のイベント卒業式を終え、屋上に来ていた。
一人で黄昏れていると、後ろから、聞き慣れたドアの開く、重たい音が聞こえた。
「あ…来てたんだ…」
「うん…お別れだからね…魁原も同じじゃないの?」
「私も…同じ」
学校の中で、一番別れたく無い場所…それが屋上だった、僕にとっても…魁原にとっても…。
「終わっちゃうね…中学生…」
「うん…」
卒業証書を片手に、二人とも下を向いたまま、目を合わせなかった。
「あのさ…一つ、聞いていいかな」
二人の沈黙を破って、話し掛けたのは、僕からだった
「ん?、なに?」
「何で、魁原が仙陽高校受けたの?」
「…え?」
私立仙陽高校…この地区じゃ知らない人は居ないぐらいの試験校。
「わざわざ推薦取ってまで、何で入ったの?」
「えぇっと…」
この問い掛けに、魁原はこう答えた。
「やりたい事があったから…かな?」
「やりたい事?」
僕が首を傾げて言うと。
「うん、やりたい事があったの」
笑顔でそうゆう魁原に、スッとはにかんで、
「なにそれ?」
そう聞くと、魁原は口元に人差し指を当て、こう言った
「秘密」
最初のコメントを投稿しよう!