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脱ぎ捨てた寝間着をそのままに、専用の袋に入った龍風雅を懐へ入れ、部屋の障子を静かに開けた。
縁側に出て、外の空気を吸う。
やっぱり早朝の空気は心地好い。
東の空が白んできているが、まだ夜明け前のため、薄暗い。
セミもまだ起き出していないのか、静寂が辺りを包んでいる。
さて、日課に行くとしよう。
寝ている家の皆を起こさないよう、いつものように静かに、物音立てず裏口まで進む。
目覚めた時の叫びが聞こえてなければ良いが…。
土間のようになっている裏口で下駄を履き、また忍び足で外に出た。
外に出ればこっちの物。
目の前に広がる森へと、私は駆け出した。
※ ※ ※
『よう、お嬢。今朝も早いねぇ』
「何だ、小松か。おはよう」
『何だとは何だよ、失礼な』
森の中を移動している途中、不意に耳元から“人ならざる者”の声が聞こえた。
聞き慣れたその声の方へちらりと目を向けると、そこには手の平程の大きさの若い男が宙を飛びながらついて来ていた。
よく見れば、背に透明の羽があり、高速で動かしているのがわかる。
それに、ぼんやりと緑色に光って見える。
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