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『お嬢、ため息なんてつくもんじゃねぇって。ため息つくほど幸せが逃げるって言うじゃねぇか』
「そうは言ってもなぁ小松。時にはため息つかないと、色々なものが溜まり込んで、その内爆発してしまうぞ」
『爆発ってそんな…たかが誕生の宴だろうが』
そう、誕生日には宴が開かれる。
父さんと母さんの誕生日にもだ。
その宴には、我が八月一日一族の者が大勢家に集まって来る。
それもそのはず。
八月一日家は古くから神社を営んでおり、数千年の歴史があるのだから。
我が家はその本家で、現八月一日家当主が父・照人(てるひと)であり、その妻が母・咲羅(さら)、そしてその子どもが私と翔大という位置付け。
八月一日家は、血の濃さを重視しているからか、代々男女関係なく長子が跡目を継いでいる。
八月一日家の者は、その血が濃ければ濃いほど、その瞳は濃い青色になるという。
分家の人々は、もうその目に青を宿すことが無いほど血が薄まっており、現在では、本家の人間である父さんと私と翔大以外はこの世界で一般的な茶色、もしくは黒の瞳をしている。
父さんも大分薄まっており、淡い水色程度の濃さだ。
だが不思議なことに、私と翔大はとても濃い青の瞳を持って生まれた。
私が明るく濃い青なのに対し、翔大は深い色合いの青。
対照的な青を持った私達の誕生を、八月一日家の人々は大いに祝福したらしい。
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