日課

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どんなに愛想の良い笑顔で接されても、その瞳の奥には欲望の色がある。 そのことに幼いながらも気付いてしまって早4年。 最初は恐ろしく感じて、大人達と目を合わせることが出来なかったが、今はもう目をそらすこと無く接することが出来る。 でも、嫌悪感は拭えない。 『俺もあいつらのああいう目は嫌いだ。ヘドが出る』 小松が顔をしかめて言った。 暗い気持ちから抜け出すように、少し移動速度を上げる。 小松は難無くついて来ているようだ。 『相も変わらず、その運動神経の良さには舌を巻いちまうよ。とても人間業とは思えねぇ』 木々の枝々を軽々と伝って移動する私を見て、小松が言った。 「生憎だが、私は人間だ。それに、他の奴らが出来ないだけで、不可能なことをやってるわけじゃない。第一、人間じゃないお前が言えることじゃないだろう」 後半あたりから若干呆れた声になってしまった。 『ははっ、違ぇねぇ。でもまあ、お嬢は元々の運動神経が人一倍良い上に、鍛えられてっからな。もう人間の域を超えてんじゃねぇか?親父さん、超えちまったんだろ?』 「ああ、まあな。でも、超えたのは剣術だけだ。それに…母さんは超えてない」
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