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私は、父さんから八月一日家秘伝の武術を、母さんからは母さんの家に伝わる武術を教わっている。
母さんの実家も歴史ある一族らしく、行ったことはないが、遠くの地に家を構えているらしい。
そのためか、母さんの瞳はこの国では見ない薄緋色だ。
父さんから教わっている武術を“剛”とするなら、母さんから教わっている武術は“柔”。
相反する特徴を持つ2つの武術は私の武術力を向上させているらしく、1年程前に、得意だったこともあってか剣術で父さんに勝つことができた。
当時、そのことにとても喜んだ私は、調子に乗って母さんにも剣術で勝負を挑んだ。
だが、結果は完敗。
力の差をこれでもかと見せつけられてしまった。
たとえの表現ではなく、本当に“一瞬で”勝負を決められてしまったのだ。
父さん曰く、
「お前が咲羅に勝つことは不可能だろう。剣術・槍術・弓術・体術…その他どれをとっても化け物級だからね。私より戦い慣れている。私でさえ、一度も勝ったことが無いのだから」
だそうだ。
若干青ざめていたように見えたのは気のせいだろう。
あんなに淑やかで優しい母に、どれだけの力があるんだろうか…?
と言うか、“戦い慣れてる”って何だ?
この平和なご時世に、遠い地では戦争でもあっているんだろうか?
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