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『お袋さんに関しちゃ、何も言えねぇな。ありゃあ本物だ。超える超えないの問題じゃねぇ。第一、九つのガキにそう簡単に親は超えられねぇよ。親父さんだって、槍術の方が得意なんだしな』
「さっきまで私を超人みたいに言ってたお前が、今更何を言うか」
『それは一般論の話だ。大の男を楽々負かすことが出来るが、まだ十になったばかりのお嬢と、武術の達人で、その上戦い慣れてるお嬢の親御さんたちじゃあ、次元が違うんだよ…って!お嬢、待てよ!そいつはあまりにも速えって!』
何となく少しムカついたから移動速度を上げると、小松はついて来れないようだった。
ざまあみろ!
清々しい思いで、より一層速度を上げながら目的地へと向かった。
だからだろう。
1人取り残された小松の呟きは、私の耳に届くことはなかった。
『精霊である俺の速さを上回るたぁ、自ら超人だって言ってるようなもんじゃねぇか…。こりゃあいよいよ、お嬢も人外の仲間入りか?』
※ ※ ※
小松と別れてしばらくたつ。
今日はいつも以上に速度を上げてきたから、早めに着けそうだ。
まだまだ太陽が顔を出す時間じゃない。
「余裕ができたな…」
私の呟きは、目の前を流れ落ちる水の音で掻き消された。
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