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「“学ぶ”ということは、勉強とは少し違う。自分で見て、聞いて、触れて、考えて、理解し、実行することだ。まあ、要するに、経験しろってことだな」
「けいけん?」
「そうだ。お前はまだ幼いから、今は分からなくてもいい。ただ、今私が言ったことを忘れるな。心に刻んでおくと良い」
「わかった」
結局違いは分からなかったが、言われた通り、しっかりと心に刻み、返事をした。
そんな私の声に満足したように、その人は微笑んだ。
「お父さんとお母さんから習う武術と礼法の2つは特に学んでおくように」
「どうして?」
聞くと、その人はとても嬉しそうな顔で言った。
「さっき言ったように、蒼夜、お前にはこの先、とてもつらいことが起こる。でも、そのつらさでお前の心に空いた穴を埋めてくれる奴らが大勢現れる。そのためには、さっき言った2つと、私が教えた笛が重要になってくる。礼法と笛はそいつらとお前をつなぎ、武術はそいつらを守ることが出来るからな」
自分のことのように、嬉しそうに、楽しそうに話すその人に釣られて、私も何だか嬉しくなった。
そして、笑顔で言った。
「じゃあ、あやはその人達と出会って、楽しくいれるように、その3つをいっぱいがんばる!」
幼い言葉で言った私に、一瞬驚いたように目を見開いたその人は、次の瞬間には目を細めて、そうだな、と返してくれた。
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