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「お別れだなんていやだ!いやだよ   !」 ぬかるみに転げそうになるが、何とか体勢を保ち、その人の方へ走り出した。 「私の言ったことを決して忘れるな」 「   !   !」 その人の名を叫びながら、走る。 「色々なことを学ぶんだぞ」 「   !   !」 涙があふれてくる。 「武術・礼法は特に学んでおけ。笛の練習は怠るんじゃないぞ」 「   !   !」 雨が無情にもたたきつけてくる。 「何時、如何なる時も、どんな奴に対しても、感謝の気持ちを忘れるな」 「   !   !」 それでも、光り轟く雷への怯えを抑さえつけて、ひたすら走る。 「そして、その感謝を言葉や行動で表すんだ」 「   !   !」 強く、激しい風に飛ばされそうになる。 「後悔のないよう、一生懸命生きろ」 「   !   !」 声が嗄れるのも構わず、叫び続ける。 「たとえ、どんなにつらくとも、どんなに時間がかかってもいい…」 「   !   !」 雨や涙、鼻水や汗でぐしょぐしょの顔を不安と悲しみで歪ませ、走る。 「自分の運命と正面から向かい合って、受け入れろ」 「   !   !」 たったの6、7間が、とても長く感じる。
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