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黒くて長い髪に、凛とした態度。
女性にしては清々しい、さっぱりとした性格。
美人で格好良い印象を持った。
私の記憶が正しければ、一緒に過ごしたのは1ヶ月くらいだっただろうか。
そんな短い間に、あの人は色々なことを教えてくれた。
笛の吹き方や作り方、少しの武術に礼法。
後の2つは、あの人が雷に掠われた数日後から今日(こんにち)まで、父さんと母さんが教え続けてくれている。
いずれ、学ばなければならなかった物らしい。
まだ替えたばかりの青々とした畳に敷かれていた布団から起き上がる。
立ち上がって伸びと共に大きな欠伸をした後、布団を綺麗に畳み、2段で構成された押し入れの上の段へとしまった。
汗が鬱陶しい。
寝間着を脱ぎ捨て、棚の横に位置する箪笥へ向かう。
手拭いを取り出して汗を拭き、少しさっぱりしたところで、今日着る服を選ぶため、また箪笥をゴソゴソと漁った。
「ん~、やはり浴衣か?いや、甚平でいいか」
今の季節は夏。
動きやすい甚平を取り出して着替えた。
姿見で自分の姿を確認すると、そこには青地の甚平を着た、短くさっぱりと切られた黒い髪が所々はねている――言っておくが、寝癖じゃない。父さんに似ただけだ――少女、即ち鏡に映る自分が青い瞳で私を見つめ返していた。
心なしか、眠気がまだとれてないような顔だ。
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