寒い冬

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「友達に誘われたからです。彼女達に」 「シンプルな答えだね」 なぜだろう。バカにされたような気がした。 私がそんな感情をあらわにすると、さらに笑われた。 「ごめん、ごめん。さっき車の中で話してた彼女達の言い分と全然違うからさ」 「え?」 露骨に嫌な声だったと思う。 受験生なんだからすさんでるのよ、と自分で自分に言い訳。 「変な時期に転校してきた編入試験が優秀で、 磨けば光りそうな原石の女の子が昼休みも一人でお弁当食べて、 おとなしくしてたから、あの子が部活に入ったら華やぐだろうなぁと思って、 声をかけたくて声をかけたくて、毎日教室に足を運んでいたら、 その心を読んだ男が、いいとこ取りして、君に声をかけたって言ってたよ。 十五分くらい延々と説明してくれたから、もっと脚色されてたけど」 「知ってて聞いたんですか?感じ悪いですね」 「感じ悪いかな。同じ場面を違う人間に聞いてみるっていうの、面白くない?」 そんなことを考えたこともなかった。 今はまだ自分のことに一生懸命なだけで、自分が今生きている、自分の立場だけでせいいっぱい。 「大学生って、意外に考え方がオトナなんですね」 嫌味を含めて言ったのだけど、深山さんは笑顔で答えた。 「厳しい母親に育てられると、大人になっちゃうんだよ」
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