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案の定、席はまばら。まばらな教室でのホームルームを終えて学校を出ると、校門の前に思いがけない人が立っていた。
深山さんだった。
先生を待っているのかと思い会釈だけして通り過ぎようとすると
「時間ある?」と声をかけられてしまった。
時計に目をやって「少しなら」と答えた。
駅に帰る道の途中に朝は登校途中の学生でいっぱいのパン屋がある。
少しお茶ができるスペースがある店の前で深山さんは足を止めた。
「行く?」
でも気分はパンよりケーキ。なんだかすごく甘いものが食べたくて、
もちろん、デニッシュ系のパンでもいいのだけど、
最近食べていないから「いい店知ってるので、そこでもいいですか」と言ってみた。
駅を少し超えたところにあるお店。
本当の下校時間であれば、女子高生でいっぱいなのだけど、
登校日の三年生くらいしかまだ下校してはいないので、思った以上に閑散としていた。
三十代くらいの女性三人がおしゃべりし、二十代の女性が一人雑誌をめくっているくらい
顔見知りのマスターに会釈すると、深山さんの方を見ておやっという顔をした。でも無口なマスターだから特に何も言わない。
一番奥の席に向かいながら「ティラミスでパフェお願いします」と声をかけた。
奥さんがお水を持ってやってきて「彼氏は?」と聞く。
「彼氏じゃないですけど、コーヒーで」
私は無言で奥のソファに腰をおろした。深山さんは向かいの席に座る。
何か話した方がいいのかなぁと思うけれど、先に声をかけてきたのは深山さんの方。
共通の話題もないのに、気を遣って私から話を振ることもないよね。
うん。
自問自答。
でも、なんだか間が持たないから、いただいた水を口に運んだ。
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