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もうすぐ夜明けだ。
芯まで凍えてしまいそうな体をあたためるため、右手と左手をこすりあわせた。
冷えないように小刻みに足踏みをしている。
できるだけ寒くないようにとタイツとハイソックスの上にブーツまで履いて来たのに、こうやって立っているとすごく寒い。
センター試験を控えているのにこんなところに来てしまったことににわかに後悔し出した。
「本当に、先生来るの?」
一緒にいた美紀子が隣の博美に聞いた。
「初日の出の相談してたら、先生が車出してくれるってことになったんだよね」
博美は背後の橋本君に同意を求める。
橋本君はその隣にいた水口君と顔を見合わせて2人してうなづく。
美紀子が「なんで、先生なんか」とつぶやく。
私たちは同じ高校の新聞部。
美紀子と博美は推薦で大学が決まっていたのだけど、
私を含めた三人はまだ受験前。
初日の出を拝んで合格祈願をしようという話になった。
私も受験ばかりというのも、なんだか重苦しいから同意。
橋本君は、彼女の博美に強引に誘われ、芋づる式にもう一人の水口君も一緒にやってきたというわけ。
水口君の方は今年はあきらめたと言っているから、
そんなに切羽詰まっていなかったかもしれない。
それとも、美紀子狙いかな。
口を動かすと顔まで寒くなりそうだったので、私は黙っていた。
別に乗り気でないわけではなく、本当に寒さに弱いだけ。
いくら防寒していても足元からジンジン冷えてくる。
駅前の時計に目をやると五時五分をまわっている。
いつも時間にうるさい先生なのに。
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