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「弥生」
揺り動かされて目が覚めたとき、車はもう止まっていた。
目がさめきらず、周囲の状況はわからない。
「ついたよ。行くよ」
「うん…」
誰に起こされた?美紀子?どこ?あぁ、初日の出だ。
「海まで行ったら車が置けるかどうかわからないから、
車はここに置いてくんだけど、君どうする?」
運転席の人がこっち見てる。誰?
あぁ、先生の息子だ。
「行きます…」
私は体を起こして、美紀子にせかされて車を降りた。
まだ薄暗いから、ここがどこなのかいまいちわかっていない。
「佐々木さん、大丈夫?寝起きで寒くない?」
聞いてきた先生にうなずいた。
「佐々木には甘いなぁ。俺らも寝てたのに、先生そんな優しい言葉かけてくれなかったよな」
水口君が不満そうな口をきいたら、
「水口君は今年はあきらめるんでしょ」と、ちくり。
肩をすくめて舌を出す水口君の横腹を先生は小突いた。
「ま、最後まであきらめないでがんばりなさいよ」
「はいはい」
そんなやりとりをまだほうけた頭で眺めている。
「いやぁ、初日の出なんて、何年ぶりかしら~!今年はいい年になりそうだわ~!!」
目的地の橋の上には初日の出を見る目的の人が多く集まっていた。
正直一番はしゃいでいたのは、先生かもしれないまだ夜明け前の海だった。
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