寒い冬

6/18
前へ
/130ページ
次へ
「弥生」 揺り動かされて目が覚めたとき、車はもう止まっていた。 目がさめきらず、周囲の状況はわからない。 「ついたよ。行くよ」 「うん…」 誰に起こされた?美紀子?どこ?あぁ、初日の出だ。 「海まで行ったら車が置けるかどうかわからないから、 車はここに置いてくんだけど、君どうする?」 運転席の人がこっち見てる。誰? あぁ、先生の息子だ。 「行きます…」 私は体を起こして、美紀子にせかされて車を降りた。 まだ薄暗いから、ここがどこなのかいまいちわかっていない。 「佐々木さん、大丈夫?寝起きで寒くない?」 聞いてきた先生にうなずいた。 「佐々木には甘いなぁ。俺らも寝てたのに、先生そんな優しい言葉かけてくれなかったよな」 水口君が不満そうな口をきいたら、 「水口君は今年はあきらめるんでしょ」と、ちくり。 肩をすくめて舌を出す水口君の横腹を先生は小突いた。 「ま、最後まであきらめないでがんばりなさいよ」 「はいはい」 そんなやりとりをまだほうけた頭で眺めている。 「いやぁ、初日の出なんて、何年ぶりかしら~!今年はいい年になりそうだわ~!!」 目的地の橋の上には初日の出を見る目的の人が多く集まっていた。 正直一番はしゃいでいたのは、先生かもしれないまだ夜明け前の海だった。
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加