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二年間毎日のように一緒だった妹。
二年間なんてあっという間で短いかもしれないけど、俺にとっては宝物のような二年だった。
まだ言葉を覚えたての妹。
―――――
俺は、もう薄暗く太陽が沈み始めているとき、一台の車の前に立っていた。
「…じゃあね…もう、お兄ちゃんなんだから…」
母がそう言った。
お兄ちゃんだから…?
別にそんなの気にしてない。
俺は、別に一人でも平気だ。だけど…
車には父と…妹、車から降りた母が、目の前にいる。
俺の後ろには、顔すら知らない親戚。
これから世話になる人たちなので、愛想良くしなければ、と頭の片隅で思う。
「ああ…うん、わかってるよ」
俺は素っ気なく答えた。
そんな俺の反応に母がため息をつく。
その頃、母の後ろの車に乗っている妹は、今の事態が何もわかっていないように無邪気に笑っていた。
それを見て、俺は少し顔を歪ます。
俺の横を通りすぎ、後ろの親戚たちに母は挨拶を、さっきもしたのにもう一度していた。
手持ちぶさたになった俺は、妹が乗っている車に近づいた。
コンコン、と窓を指で叩く。
下を向いて玩具で遊んでいた妹は、それに気づきぱっと俺の方を見た。
妹はニコオと笑う。
そして口をパクパクとさせていた。
一瞬妹の行動がわからなくて首を傾げたが、窓を閉めていたことに気づき、俺は下を指差して窓を開けるように促した。
妹もスイッチを見たので開くのを待っているが、なかなか開かない。
額を窓にくっつけて中を見ると、妹は小さい手で必死にスイッチと戦っていた。
思わずくすりと笑う。
と同時に、ヴー…と窓が開いた。
「おっ…にぃちゃんっ」
妹は言葉の覚えが遅い方なのだろうか、まだまだ名前を呼ぶのもぎこちない。
目を細めて笑う妹の頭を、黙って撫でた。
きゅっと妹は目を瞑り、大人しくそれを受け止めている。
「…お、にぃちゃん、は…のらないの?」
手の動きがぴたりと止まる。
今、この状況が理解出来ないのだから無理もない。
純粋に訊ねる妹に、少し苦笑する。
「うん…お兄ちゃんは…今日は乗らないんだ」
「…どーちて…?」
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