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両親が、いきなり外国に住むことを話した。
最初、俺は意味がわからなかった。
今まで日本で普通に暮らしていたのに、いきなり国境を越えた話をされても、ついていけなかった。
『え…なに…?』
俺はテレビから視線を外し、目を白黒させた。
『だからね、お父さんの仕事柄、移動しなくてはならなくなったの』
パリに、と母さんは言い、父さんの方を見た。
『ああ、急で悪いがね…』
『え…ちょっと待ってよ…っ』
パリ…?パリって、あのパリか?
くらくらとする頭で、俺は必死に考えた。
俺はまだ小学生で、もうすぐ六年生だ。
友達も少なからずいるし、第一俺は英語は喋れない。
パリが英語なのかも、定かではないが。
と、何か見当違いなことで悩んでいる気がするが、必死に話についていこうとした。
『あの子は…花はまだ二歳だし、日本語以外も今からなら大丈夫だろう』
『そうね。あの子がまだ小さくて良かったわ』
『ああ』
え…?俺は…?俺の心配はないのか…?
確かに、妹の花はまだ未熟で、心配事も多いだろう。
俺の存在なんてないような口ぶりに、俺は不安に思った。
俺の表情とは正反対で、両親はにこにこと笑っていた。
『俺…も、覚えること、いっぱい…ある、ね……』
いささか表情は固く、声も震えていた。
嫌な予感が的中しそうで、こわかった。
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