第一章 桜と少年と

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桜の木の根元に座り、背中を幹に預けるようにして、町並みを眺める。 この場所は小高い丘になっているから、眺めが良い。町全体が見渡せる。 「今日はな、あの日からちょうど10年だってことで、鴉沙(あすな)も来る予定だったんだけどよ……やっぱり、来られなかったんだ。しかたないよな…あんなことがあったら……」 ざぁっと風が吹き、桃色の花びらが幾枚も宙を舞う。 それを見ながら、オレは無意識に呟いた。 「――桜姫(さき)……」
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