黒の羽織と白い百合

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煙突からでる煙りを 幼いの彼女は ただただ じっと見つめていた 彼女はまだ 知らないみたいだ 『何してるの?』 話し掛けてみた 「空見てる。」 空? 『どうして?』 彼女は指を指しながら言った 「あそこから雲が出てくる」 雲? 『煙りのこと?』 「うん」 『……そっか』 わたしは俯いた そしたら 彼女はわたしの顔を 覗き込んできた 「………………お姉ちゃんは何してるの?」 『ん?………』 咄嗟に彼女の顔をみた 『君のこと……見てる…かな』 「なんでぇ?」 そして彼女はまた覗き込む 『………綺麗な眼だなぁ…って思って』 「きれい?」 彼女は眼を大きく 丸くした 『うん、きれい』 「ほんとぉ?」 うん ほんとに ほんとうに 『きれいだよ』 「えへへっ」 彼女は照れながら 眼をきらきら輝かせ 満面の笑みで喜んでいる その眼には いつか いろんなものが うつし出され いろんなものを 見つめることになるだろう 知ることになるだろう でも閉じてしまわないように 恐れないで ちゃんと 見つめていてね 決して そらさないでね 『じゃあ行くね』 「もう行くの?」 『うん……………百合………置きにいかないと』 『じゃあね』 そしてわたしは 歩き出した 「まっ」 背中の方から走る足音が 聞こえる 「まってぇ!」 気が付くと 彼女は すぐ隣まで来ていた 『どうしたのっ?』 そう 問い掛けると 「ワタシも一緒に行くっ」 と言って わたしの羽織りの裾を 息切れしながらも その小さな手で ぎゅっと 掴んだ
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