序章

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 どこの山とは分からない、ただ日本の中にある、誰も人が踏み入れないような、そんな山。 そんな山に忘れ去られたように放置された祠に、男性がもたれ掛かっていた。 その男の後頭部はまるでテレビの中のエイリアンのように延びていて、彼が普通の人間では無いことを、物言わず示していた。 そして、彼を囲む黒い影たちも。 人間では、無かった。 「このぬらりひょんともあろう者が、物の怪ごときに殺られようとは。ワシも、墜ちたものじゃな」 口から血を垂らし、男は言う。男の身体には複数の傷が有り、彼が満身創痍であることは、誰から見ても明らかだ。 そんな中、黒い影が動き出す。 刀だ。 黒い影の腕らしき部分がニョキリと伸び、それが刀の形を形成していた。 そしてそれを、ゆっくりと振りかぶる。狙いは、もちろんぬらりひょんだ。
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