576人が本棚に入れています
本棚に追加
/124ページ
「それには海よりも深くみえて実はそうでもない事情があるのだが……聞いてくれるか?」
そうでもないのかよっ!?
殴りたくなる衝動を押さえ、純弥は無言で頷いた。口を開くと、ついつい罵詈雑言が飛び出してしまいそうだったから。
「……妾達妖怪は王の元、人間の様に社会を形成して生活していた」
どうやら、彼女が妖怪と言うこと前提の話らしい。
「しばらくは平和な時が続いていたんだが……やがて、“物の怪”と呼ばれる化け物達が、姿を見せ始めた」
「待て待て待て待て待て!」
話の急な展開に、思わず純弥は口を挟んでしまった。
「物の怪ってのは、お前ら妖怪とはどう違うんだ?」
「ふむ……」
彼女は一口お茶を飲み、続ける。
「私にも詳しくは分からんよ。ただ、物の怪と我々妖怪……妖は、全くもって別物だ」
彼女の話によると、物の怪というのは影のような見た目で、妖達を補食する化け物だという。
「それで、つい先日。私の父、ぬらりひょんが物の怪に殺られた」
「……ッ!」
思わず、息が詰まる。
物の怪は、妖を食べる。つまり、彼女の父親は……。
「そして本来なら、その娘である私が、王の座に着くことになっていた。だが、そこに一つ、問題が浮上する」
ピンッと、彼女は人差し指を突き出した。
折りてぇ。
そんな衝動を押さえ、話を聞くことに徹する。
最初のコメントを投稿しよう!