『○○』

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『○○』

 私は、今日もアナタに殴られる。  殴られ、蹴られ、詰られ……激しく愛され、求められる。  アナタの舌が腫れあがった頬を這い回り、武骨な掌に痣だらけの乳房を揉みしだかれれば、怒涛のように押し寄せる痛みに思考が奪われ、私はただ快楽へと堕ちるのみだ。  千切れるくらいに荒々しく、乳首に吸い付くアナタの目には、狂気染みた真っ赤な光が宿っている。私が喘ぎ声とも悲鳴とも付かない声を上げると、その光は一層爛々と輝きを増していった。 「ハァハァ、一端な声を上げるじゃねぇか、生意気な。豚なら豚らしい鳴き方ってもんがあるだろう、ハァハァ」 「ブ……ブヒィ、ブヒィ!」  要望に応えると、アナタは恍惚の笑みを浮かべ、固く握り締めた拳を再び振り下ろす。 「豚ぁ。鳴け、豚ぁー! ほらぁ、もっと泣きやがれ!!」  毎晩毎夜、殴られながら衝かれ、衝かれながら殴られる。痛みと快感が同時に頭を刺激し、私は疾うに自分を見失っていた。  そういえば、久しく名前も呼んでもらっていない。  
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