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私立花園学園、通称ハナガクは関東の外れにあった。
遅めの桜も緑に変わる頃南校舎四階の角部屋は、例年にない賑わいを見せていた。
窓際のパイプ椅子に陣取る、艶やかな黒髪の女子生徒は言う。
「私は花園りら。ハナガク写真部の部長だ」
フランス人形のように整った麗しい顔つきのりらは4人並んだ新入生に言った。
「じゃあ、1人ずつ自己紹介してもらえるか。じゃあ、そっちの男子から」
てことは、俺か。
見てる。先輩がめっちゃ見てる。
やりづらいことこの上無し…
「俺は、1年2組の春川青です…」
なんでこんな目に遭っているのか、誰か教えて欲しい。
やっぱりアイツだ。
腐れ縁も腐れ縁なアイツ、夏目晴史朗のせいだ。
時は遡ること数週間。桜の散る頃のこと。
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