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廊下の向こうの方から、一際大きな笑い声が弾けた。
新入生の中にはもう既に、面白いヤツとして定着している者もいるようだ。
若者特有の、明るい笑い声が広がっている。
その横を通り過ぎる青の顔には、困惑とも、憤怒ともつかない微妙な表情が浮かんでいた。
「写真部…」
「そ、写真部。」
夏目は輝かんばかりの笑顔を浮かべて、青を見ている。じぃっと見ている。
くそ、耐えきれねえ。
「なんで写真部なんだ?他にも色々あるだろ」
ハナガクは文化系部活の活発さで、一目置かれているのである。
いやぁそれはさぁ、と、笑顔を崩さずに夏目は言う。
「なんとなく、かな」
「なんとなくってお前な…」
ガックシとばかりに肩を落とす青を尻目に、夏目は言い放った。
「んじゃ、今日の放課後ピロティで」
「ちょ、待てよ夏目!」 夏目はもう既に廊下の遥か向こう。
昔から、逃げ足の速さは誰にも負けないんだよな…と、青はひとりごちていた。
その様子を見つめる人影に、青は気付いていない。 「写真部…?」
人影は呟いて、その場を離れた。
「写真部か…」
青もまた呟いて、教室へと向かった。
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