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「おい、夏目まだなのか」
夏目は振り返り、いっそ清々しいほどの笑顔で言い放つ。
「迷ったみたい」
そうだった。こいつ超ド級の方向音痴だった。
なんで俺は忘れてたんだ…
「写真部室って南校舎だよな」
「うん、そうだよ」
日の射す方向からみて、あながち間違ってはいないはずだが…
誰かいないかな、誰か…
「そこの君たち」
振り返ると、女教師がこちらを見ていた。
「花園先生」
花園桃華。1年2組の担任であり、青たちの担任教師だ。
その名前の通りちっこい身長と童顔の持ち主だが、グラマラスなボディも併せ持ち、特に男子からの人気を誇っている。
にしても、何故ここにいるのだろう。
「あら、冬原さんに夏目くんに春川くんじゃない。どうしたの、こんなところで」
「あ…えと」
口ごもった青に代わり、粋衣が言う。
「写真部室を探しているんです。今日から部活見学ですよね」
「あら、そうだったの。だったら丁度良かったわ。私もこれから行くところだから」
なぜ写真部なんかに?
青の怪訝な表情を見て、花園先生が続けた。
「あら、私、写真部の顧問なのよ?」
ぱっちりとした右目を、一瞬瞑って見せる。
そして、青たち3人をひたと見つめ、言い放った。
「さあ、行きましょう。写真部室に、ね」
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