思い出

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彼には好きな人がいた。 小柄で色が白くて、目がくりっと大きな可愛いらしい女の子。 あたしから見ても、羨ましいと思うくらい可憐な子だった。 だけど彼女には好きな人がいた。 スポーツ万能なバスケ部の先輩。 顔もかっこいいと彼から聞いた。 彼はいつもあたしに彼女の相談をしていた。 彼女の名前を彼が呼ぶたびに、あたしの胸は悲鳴をあげる。 それはね、あたしが彼のこと好きだから。 気づいてた? あたしの気持ち。 あたしは彼に「好き」だと悟られないよう、いつも必死に慰めた。 彼には幸せになって欲しい。 あたしと彼じゃ釣り合わないことは、誰より自分が知っている。 いつだったかな。 彼は泣いていた。 あれはたしか、思い切って彼女に告白した日。 前日からとても緊張していて、あたしの前で告白の練習をしていた。 うまくいくといいと思う気持ちと、彼を取られたくないという思いで、あたしの心は複雑だった。 だってそうでしょ? あたしは彼が大好きなのだから。
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