111人が本棚に入れています
本棚に追加
彼はあたしを「クルミ」と呼び捨てで呼んだ。
彼に名前を呼ばれるたびに、体中が心臓みたいにドキドキする。
何年たっても、慣れることはなかった。
誰が呼ぶ「クルミ」より、彼が呼ぶ「クルミ」が好きだった。
彼が家族と喧嘩をして家を飛び出した日、あたしは彼を探しに出かけた。
彼の行きそうな場所に行き、ひたすら探してみる。
だけど、どこにも彼の姿はない。
もしかしてと思い、あたしと彼が出会った場所に行くと、彼の姿があったんだ。
心配した。
でもそれ以上に嬉しかった。
あたしに気づいた彼は「心配かけてごめん」と呟いた。
あたしは彼に駆け寄り、声をあげて泣いた。
あの涙の意味。
わかってくれたかな?
あたしとの場所を忘れないでいてくれてありがとう。
最初のコメントを投稿しよう!