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僕が彼女に抱いた第一印象は、面白くない女の子だった。
ここでいう面白いというのは、センスのあるボケをするとかキレのいいツッコミをするとかそんなことではない。ただただ彼女は静かだった。口数も性格も雰囲気も。とにかく消極的で物静かな女の子だった。僕らが遊びに誘っても乗り気ではなかった。いつも無理やり参加させ遊んでいた。そんな僕らの良かれと思った行動はしかし、彼女を傷つけた。
競い合う遊びではいつもビリで。ままごとに似た日常を模した遊びでは僕らの内輪な空気に馴染めず。今思うと毎日辛かったのかもしれない。少なくとも彼女は僕らにずっと、少し怯えていただろう。その時の僕らはあまりに活発で馬鹿で空気が読めず自分勝手で、まったく彼女と肌が合わなくても当然と言えば当然であった。彼女はなにも楽しむことができていなかった。
そんな彼女を救うのはとある一人の少年。
「初めまして。傘賀町から引っ越してきました、海藤陸です。よろしくお願いします」
彼は実に真面目な少年だった。それでいて勉強もスポーツもできる器用な少年。彼女と違い順応力が高い彼は僕らにすぐに溶け込んだ。さらに人一倍優しいという完璧な少年。そんな彼だからこそ彼女が心から楽しめていないことに一人だけ気づくことができたのかもしれない。
簡潔に述べよう。
彼女は彼に恋をした。
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