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閑話休題。
「というわけで何とか一つクリアだね」
「俺のおかげでな!」
「開き直りやがった」
今まで小学生サイズの手袋をつけておきながら全く気付かないこの鈍感な男、野火太郎。うるさいやつである。同じバカでも僕は眼鏡バカ、森木林太郎のほうを引き取りたかった。ここまでうるさくはないだろうし。
僕らが今こうしてちょっとしたトレジャーハンティングをしているのは勿論、それがこの世界から抜け出すためのゲームだからである。
遡ること1時間前。少女の口から第二ゲームを告げられた。
『借り物探し』
それが今回のタイトルである。また偶然にも聞き覚えのある単語だった。また記憶を呼び起こす。少女がご丁寧にルールを説明する中僕は記憶の渦に呑み込まれていった。
『借り物競争を進化させようぜ!』
『また唐突に……』『うん、確かに楽しいもんね、借り物競争』
『だろ!? やろう! 今すぐ! 借り物カードはもう用意した!』
『字、汚いね……。海藤君書き直しといて』
『え、俺かい?』
『うん、綺麗でしょ? 字』
『うーん、自分の字に対してそんなこと思えないんだよなぁ』
『陸がやらないならこの俺が!』
『眼鏡バカは黙ってろ』
『誰がバカだこののろまなバカ』
『ちょっとー、2人とも落ち着いて落ち着いて』
『あのさ、彼女に書かせてみるのはどうかな? すごく字がきれいなんだ。大人よりもずっとさ』
『え、そうなの?』
『うん。だからさ、書いてくれないかな?』
『佐土優奈さん』
……。
そんなこともあったな、としみじみ思いながら頭の中でルールを整理。要は借り物競争だ。札に書かれたものを各々借りてくる。それだけのこと。ただしこれは競争ではなく札に書かれているものをいくつ借り集めることができるか、ということに楽しさを感じるゲームだ。
勿論制限時間はある。小学生だった当時は夕暮れまでと僕達は設定していたのを思い出す。今回、少女が口にした制限時間は『四時間』。長いようで短い。ちなみにこの世界の時計は一様にすべて止まってしまっているため僕らは少女からデジタル式の腕時計型タイマーをもらうこととなった。なんと気前が良い。
そして、程なくして少女の口から『ゲームスタート』と発せられた。僕らは札を受け取るのと同時に、事前に話し合った通り二手に分かれた。僕と海藤と野火の三人、金原と天音と森木の三人だ。
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