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カードは一人一枚用意されている。少女の開始とともに目の前に出現したのだ。僕のもとに現れたカードは『ウエディングドレス』。なんと僕に縁のないカードなことか。
ちなみに野火は先ほど見つけたあの『手袋』である。海藤は……なぜだか教えてくれない。カードをすぐ自分の胸ポケットへ隠してしまった。その後、「だ、大丈夫さ。簡単さ! だから俺の借り物は後回しにしよう!」と僕らと一切目を合わさずに言ってずかずかと進んでいったのである。
もう一つのグループは、金原が『たらこっち』、森木が『幾何学基礎論の124ページ』、天音が『エロ本』。ひとつ完全にセクハラが混ざっている。
この中で一番難易度が高いのは意外と金原の『たらこっち』である。たらこっちとは、毎日餌を与え糞尿の始末をすることを強いられるキーチェーンゲームだ。サボると簡単に禿面の汚いおっさんに成り果てる。しかもいつまでも親を頼る糞ニート野郎である。そして残酷にもそのまま死を迎えてしまう当時の子供たちに衝撃を与えるゲームである。ブームだった当時、いったいどれくらいのたらこっち達が殺されていったことだろうか。
確かに『たらこっち』は大人気だった。品切れが永遠に続くんじゃないかと思うほどに。それをこんな田舎でそれを手に入れるということはつまり神に等しかった。都会をあれほど羨んだことはない。簡単な話、僕らは誰もこの年『たらこっち』を手に入れることはできなかったのである。代わりに出回った偽物『いくらっち』で僕らは満足するしかなかった。『あれ? こっちの方がセレブリティじゃね?』と言い続けていたのは黒歴史である。
確か、僕らの知り合いで『たらこっち』を持っていたのは一人、隣町のメイくんだけだったはずである。ただし、住所は隣町だったということしかわからない。つまり金原はわざわざ隣町まで行き家をしらみつぶしにしなければ……とするくらいならこの町をしらみつぶしにした方が速そうだ。しかしこのゲームにおいて一番大変なのはやはり金原となるだろう。自分たちのが終わったら手伝ってあげた方がよさそうだ。
というわけで、
「そろそろカード見せてくれよ、海藤」
「ふぇ!?」
本物の幼女でもそんな反応しねえよ。
「おう、そうだな。次は陸のいってみっか! 俺がサクッとジュワッと見つけてやるぜ!」
揚げ物みたいな意気込みだな。
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