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「いや……俺のは後回しにしてくれないかな……?」
「僕としては海藤が先の方がいいんだけど」
「水木君のはウエディングドレスだったね? さて、見つかりにくそうだ。先に探しに行こう!」
「実はもう心当たりがあるんだ。だから後でいい」
「ぐっ……! しかし!」
「ええい! じれったい! いけ野火! 君に決めた! たいあたり!」
「ラッシャイ!」
某少年のごとく野火をせかすと某岩のごとく海藤に突っこんでいった。そこは『ピカピ!』がよかった。敵は水タイプっぽい名前だが大丈夫だろうか。
「うわっ!」
見事かわされることなく命中。硬いアスファルトに転倒する海藤。ご、ごめん……。
悶絶する海藤に悪いが目的は胸ポケットにあるカードなので起こしてあげるという優しい行動は後回しだ。
「野火! のしかかり!」
「ラッシャイ!」
「うわあああ!」
手足を封じられ身動きが完全に取れなくなる海藤。重いだろうが許せ。
「よし、そのまま押さえつけててくれ。その間に僕が胸ポケットからカードを取り出す」
「ラッシャイ!」
「やめてくれえええ!」
仰向けになっている海藤に乗る野火、そして海藤の胸あたりをまさぐる僕。しかもその三人の眼はどれも真剣で。さて、もしもこんな場面を誰かに見られたらどうだろうか。真剣に絡み合う僕らを見てどう思うか。
『あははおもしろーい』いや違う。『キャー素敵!』いや違う。『ふぉうー! もっとおおお!』いやいや違う。
答えはこうだ。
「うわ……。きもいよ……」「この俺が引いたぞ……」「仲がいいんですねー」
声に固まる僕ら。振り向くと金原、森木、天音がいた。軽蔑した目を向けながら。
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