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「義姉さん……」
アドロメアは、ヴァルアの姿を求めて空を見る。周囲に視線をさ迷わせ、墓を視る。どこにもあの美しく、優しい微笑みは無い。あるはずが、無い。
「ヴァルア、義姉さん……!」
アドロメアは、小さな胸を押さえ付ける。
「私、辛いよ……!今が一番辛い……!」
私、頑張ってるかな? 子供達には嘘をつかずに本当を話すべき? 義姉さんのお墓、ここで良かった?
教えてよ。私、まだまだ義姉さんが必要だよ……。
冷たい風が、静かに流れた。
死者は何も言わない。慰める事も、笑う事も、怒る事も、悲しむ事も、それは違うと否定しない。正しいと肯定する事も決して無い。ただ、黙するだけだ。
解っている。だから悲しいのだ。あの人がもう笑ってくれないからこんなにも悲しいのだ。
アドロメアは泣いていた。そして、彼女はこの苦しみをいずれ乗り越えて行くのだろう。
人とは。そうやって生きていく。
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