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「擬猿の奴も猪突の奴もリタイア。
ま、残ったのは俺様とアンタだけだな。」
虎の漢。従虎は笑いながら、万龍に声をかける。
「……ふん。俺の不完全な内を狙って来たようだな。」
城の外から聞こえる騒がし声に、従虎の目の奥がギラリと光り輝いた。
「ヒャハハ! ま、俺様が皆殺しにすりゃあいいだけの話しだよな?
んじゃ、行ってくるぜ万龍。アンタは、そこでゆっくりしてな。」
俺様一人で事足りるからよと、自信満々に歩いて行く従虎に、待て、と万龍は言い放つ。
「魔王は、ここに連れてこい。
俺直々に――――殺る。」
「ヒャハハ、メインディッシュは譲れませんってか?」
まぁいいぜと、笑いなが意気揚々と出ていく従虎の背を見送り。
「……。」
万龍は目を瞑る。瞼の裏に映るのは、牛の角を生やした魔族の青年の姿。
「……見せて貰うぞ、牛若よ。貴様が命を賭けて守った者が、それに価するかどうかをな……。」
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