間章の零、『語られざる物語り』

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「……ご託はいい。」  リュオはタリアスを見上げて、呟く。  ポニーテール気味にした青い髪は、リュオの記憶より長く太股の近くまで伸びていた。  相変わらず、男性にしては細く女性にしては太い線を描く体格と、女性よりな温和そうな顔立ち。長い睫毛と青い瞳。  白と金を貴重とした衣服は、貴族風な服装は、リュオとは大違いである。 「さて――――始めようか?」  弓を引くような構えをするタリアスに対し、リュオは左手をポケットに突っ込みながらダルそうな声色で言った。 「構わんが、場所を変えるぞ。ここで戦えば被害が大きくなる……。」  森の自然を眺めながら、そう言った。タリアスは少しキョトンとした後、クスクスと笑う。 「私が、その提案に一々乗ると思ったかい?」  タリアスの面に、満面の笑みが浮かぶ。そして、得意技であるまさに文字の通り光速の矢……パニッシャーを放とうとしたその刹那。 「貴様に拒否権があるとでも思ったのか?」  タリアスの頭が、リュオの右手に捕まり鷲掴みにされた。
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