間章の零、『語られざる物語り』

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「ふっ―――――ハハハッッ!」  目まぐるしく変わる景色。タリアスは今、落陽の空を飛んでいた。 「リュオ…………ッ!」  身を空中で器用に動かし、同じように飛んで来るリュオの姿をその青い瞳に映す。二人の距離は、大体で数百メートルくらいだろうか。  寝床に向かう一羽のカラスが、自分より高い所を飛ぶ人間二人を目撃して何と思ったのかは不明である。  とにかく、タリアスは気を取り直したように両端に刀の着いた弓のような剣で、本物の矢を引くような構えを取る。  驚いたけれど、身動きは取れないだろう?  放たれる、人間よりはるかに頑丈な猛獣一匹の頭くらいなら軽く吹き飛ばせる……文字通り光速で飛ぶ光の矢。  リュオは……無数に飛んで来るパニッシャーに対しまったくの無防備だ。まともに直撃したが、蚊に刺された程度も効いていないかのようである。  魔力で防壁くらいは張るだろうなとは思っていたが、まさかのそれすら無しの完全ノーガードで飛んで来るリュオを見て、流石に引き吊った笑みをタリアスは浮かべる。タリアスは、ドン引きしていた。
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