浅井長政

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「へい、いらっしゃい兄ちゃん。」  夜、ねねや亜璃栖を置いて来たのは世間一般でいう酒場だった。  夜もいい時間だからか、そこかしこに出来上がった男共に接待をする遊女と、目もくれずに酒を水のごとく飲み干す姿があるのに、とてもじゃないけどねねに見せるわけにはいかなかった。  だが、情報はこういった所に集まりやすい。 「どぶろく。」  それだけ言うと、近場の席に座り、軽く辺りを見回した。 「兄さん、あんた侍かい?」  そう言いながら酒をついできているこのひとも、相当出来上がってるのだろう、顔が真っ赤だった。 「ん? いや、侍というほど立派なものじゃないさ。用心棒だよ。この辺じゃ、刀を下げた人は珍しいのか?」 「んにゃ、んなこたぁないが。ま、確かに兄ちゃんぐらいの年で立派に刀下げてる奴は少ないかもな。」 「と、いうと? 元より親の刀なり何なり、あるもんだと思ってたんだが。」  この時代は、基本的には親の仕事を子が継ぐ、というのが根底にあった。  だから通常、良し悪しは別にしても大体が脇差しの一つぐらいは持ってるのが一般的だ。 「浅井長政様のお触れで、自分のやりたい仕事をある程度選べるようになったのよ。だから、武家を出ずに侍となったものも多く、刀持ちでないのも多い。」
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