浅井長政

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 この時代、合戦における武具の主軸は槍、弓と、気持ちほどではあるが鉄砲であり、刀は基本的には主ではなかった。  勿論、刀が使えないから、というわけではなく、主な理由は圧倒的なリーチの差だ。  兵士の主軸は武士、侍ではなく徴兵された農民であり、刀を扱えない、というのもあるが。  だから、基本的に戦場では槍や弓があれば問題ないと言えなくもないが、ここで言う刀を持たないというのは兵士ではなく武士、侍の話だ。  それは少しばかり異常とも言えた。  何事にも、蘭や撫子みたいな例外はあるが。 「と、いうことは今の浅井家には、刀も持てない新参者が多いということか……。」  これは逆に言えば、血筋不要の能力主義、と言えなくもないが。 「ま、結局のところ一番大事な大将、浅井様がしっかりしてりゃ、そこもなんとかなるんだろう。きっと。」  そう言いながら、一気に酒を飲み干す男。 「ちなみに貴方はその新しい侍なのか?」  腰に刀がないだけでは判断出来ない、そう思い訪ねる巽。 「前まではそうだったんだがな。今はしがない宿の店主さ。子供も出来たし、酒以外に余り銭を使わなかったんで元手もあったし、危険な侍はやめちまって今では商人さ。」
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