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「ところで君は、この小谷城、浅井家について熱心に聞いていたようだが、そんなに興味があるのか?」
唐突にそのようなことを聞かれて、巽の顔ははっと驚いた顔になった。
「最初の辺りから聞かれていたのか。」
巽はすぐにそう切り返す。
巽としては、聞かれていたことを訪ねることで、質問された内容に焦りを見せたように見せないための策であった。
少なくともただの町人ではないだろうことは、腰にある刀と雰囲気でわかっていた。
だからこそ、間者と疑われる危険があると、本当はそこに焦りを感じての挙動だった。
「まぁ、最初から聞いていたというわけではないですけど。気になる人がいるなと思って。私も見ての通り侍ですから、この国で若い刀持ちは珍しいことはわかっていますから。」
「なるほど……。」
巽は慎重に、かつためすぎないように次の言葉を紡ぐ。
「俺は別の国から用心棒で来ているから、これは知らなかった。気を付けないといけなさそうだな。」
「……。」
なお、彼女は巽に疑いの眼差しを向けて目を離さない。
「あ、あの……。流石に美人にジーっと見られると流石に恥ずかしいんですが。」
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