浅井長政

12/24
前へ
/46ページ
次へ
「ところで君は、この小谷城、浅井家について熱心に聞いていたようだが、そんなに興味があるのか?」  唐突にそのようなことを聞かれて、巽の顔ははっと驚いた顔になった。 「最初の辺りから聞かれていたのか。」  巽はすぐにそう切り返す。  巽としては、聞かれていたことを訪ねることで、質問された内容に焦りを見せたように見せないための策であった。  少なくともただの町人ではないだろうことは、腰にある刀と雰囲気でわかっていた。  だからこそ、間者と疑われる危険があると、本当はそこに焦りを感じての挙動だった。 「まぁ、最初から聞いていたというわけではないですけど。気になる人がいるなと思って。私も見ての通り侍ですから、この国で若い刀持ちは珍しいことはわかっていますから。」 「なるほど……。」  巽は慎重に、かつためすぎないように次の言葉を紡ぐ。 「俺は別の国から用心棒で来ているから、これは知らなかった。気を付けないといけなさそうだな。」 「……。」  なお、彼女は巽に疑いの眼差しを向けて目を離さない。 「あ、あの……。流石に美人にジーっと見られると流石に恥ずかしいんですが。」
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

169人が本棚に入れています
本棚に追加