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「しかし、よろしかったのですか?」
先程とは違い、浅井家のものは各々の職務に戻ったため、ここには巽と浅井長政しかいなくなった。
「何がですか?」
「浅井殿、貴女のおっしゃることは半分正しいですが、半分間違っております。確かに織田家の侍が織田家使者を名乗りながらも浅井殿を暗殺でもした日には天下の笑い者になりましょう。しかし、それは私が織田家家臣であれば、の話です。私は確かに名乗りましたが、それが正しい場合だけ、その話は成立します。」
そう淡々と語りながら、巽はすっと左手を上げる。
すると、どこからともなく亜璃栖が現れて、さっと巽の側で方膝を折った。
「私がもし織田家を名乗った暗殺者なら、私には貴女を殺すことを躊躇う道理はありませんよ? しかも、私が織田と敵対している勢力の味方であれば、一石二鳥だ。」
「ふむ、確かに一理ありますね。」
対して長政も淡々と返すが、焦る様子はない。
「しかしながら貴方は毎度敵に塩を送っているのですか?」
「いえ、たまたま昨日人となりを知りえなければやってはいませんよ。私だって死にたがりではありませんから。」
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