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「本当にあなたが暗殺者であるならば、昨日の方が足がつきにくいですし、何よりそんなことを長々語る必要はないでしょう。流石に気になるので、私を試すのは止めてください。」
少し睨みをきかせながら、長政は巽を非難した。
「失礼いたしました。もうこのような真似はいたしません。」
巽は今まで以上に深く土下座をしながら、
「お許しくださいませ。浅井長政殿。」
そう言った。
「頭をおあげください。天津殿。確かにあまり気分のよいものではありませんが、怒ってもおりませんから。」
そう言うと、次の言葉からは今までの固さとは一変して少し砕けた口調でいい始めた。
「ですが、昨日旅の用心棒と言ったのは嘘みたいですね。そっちのほうが許しがたいです。」
これは、浅井家当主としてではなく浅井長政としての言葉、という意味が口調の変化にはあるのだろう。
「も、申し訳ない。まさか間者と言う訳にもいかないし、しかも昨日の段階で浅井長政殿であるという確証はなかったもので。」
相手が浅井長政と分かっていれば織田家を名乗る手段もあったのだが、話の分からないしたっぱだと問答無用で切り捨てという可能性も考えられたが故の嘘の身分を名乗ったようだが、裏目に出ている。
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