戦国花～織田編～

浅井長政

「先に真面目な話を済ませましょう。天津殿はなにようで浅井家を訪ねられたのでしょうか。」

　また浅井家当主としての顔に戻ったのだろう。

「私達織田家としては、浅井家と同盟を結んでいただきたく参った次第でございます。」

　それを聞いて、やはりかと呟きながら巽達を睨み付けた。

「無理なことを申さないでいただきたい。浅井家は朝倉家と同盟関係にあることはご存じでしょう？　朝倉家が織田家と同盟関係にあるならまだしも、朝倉家は織田家を寧ろ敵として見ているはずです。そうであれば浅井家は朝倉家に攻められる口実を作ってしまう。」

　今浅井家は朝倉家と同盟関係にあるとはいえ、実は半分朝倉家の傘下にいるようなものであった。

　今でこそ街の賑わいだけであれば小谷城下のほうが勝っているだろうが、戦力だけでいえば桁違いに朝倉家が上であった。

　現朝倉家当主は二代前の当主に比べれば征服欲に欠けるものの、皆無というわけではないのだ。

　浅井家が不義理を働けば、浅井家は潰されるというのは火を見るより明らかだった。

　そして、朝倉家の半敵対大名との同盟は、十分に不義理に値する行動といえた。