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「後どれくらいなんだぁ? その、観音寺城ってのは。」
燦々と照る太陽の下、巽はだらっとしながら馬の背中にへばりついていた。
馬に寄りかかるから余計馬の体温で暑く感じるだろうが、それに気づけないほどには暑さに参っている。
「そうですね、まだ半分といったところでしょうか。しかし、だらしないですよ。殿。」
そう答える桜は、巽と違い暑さにだれずに体を起こして手綱を引いていた。
その額からは汗がにじんでいて、単に巽と違い耐えているのだろうことがわかる。
最も、桜が乗っている馬の前には巽と違い、撫子がへばっているからへばりようがないというのもあるのだろうが。
「せめて体を起こしてください。殿も小隊とはいえ皆を率いる身なのですから、自分だけだれてくの一に手綱を引かせているのでは示しが付きません。」
「私は気にしてない。」
今巽の後ろに座って手綱を引いているのは亜璃栖。
亜璃栖は忍だから馬はいらない歩くといっていたのだが、「戦場で隊唯一の忍として役に立ってもらうから、せめて移動は休んでくれ。」との巽の言葉に、妥協点として巽の後ろに乗ることで承諾をしたのだった。
曰く、戦場で馬がいらないから自分一人では乗らない、らしい。
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