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「……じゃがな、このままではそんな時代は来ないのではないかと、私は思う。」
どこか憂いを帯びた表情でそらを見上げている桂花。
でも憂いを帯びた中にも真っ直ぐな瞳には、強い芯のようなものが感じられる。
「南蛮では、ここよりも優れた技術を持ったものたちが、我が物顔で海を航っておる。多くの技術が、南蛮の方が上じゃ。より多く人がいてより広い、より物が多い南蛮達のほうが優れて当然じゃ。じゃが、そんな中日の本の物達は殆どのものが中にしか目を向けておらぬ。ぐだぐだと内輪で揉めて外を見ず、気づいたときには南蛮との絶対的な差が出来る……そんなことにも気づかん奴らばかりじゃ。」
だから、桂花は自分の手で天下統一を果たす、それは続きをきかなくても分かる話だった。
「井の中の蛙、とは日の本でも言うが、自分が蛙と気づかないというのも滑稽な話じゃな。」
「いや、桂花は少なくとも知っている。なら、この国は海を知らない蛙にはならない、俺はそう思う。だから、桂花にはがんばって、この国を世界に羽ばたかせてほしい。」
「言うようになったの。ま、巽は大海どころか未来まで知っておるのじゃから、そういう意味では私の比ではないかの。」
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