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「あっちぃ~~。」  部屋で一人私之は暑さに苦しんでいた。  居間から異常気象を伝えるニュースキャスターの声が漏れてくる。春だというのに気温は30度弱もある。 「母さぁん、麦茶なーい~~?」  返事はない、きっと買い物にでも行っているのだろう。  私之の家庭は母子家庭だから母親の梨之は働きづめだ、時間がある時もコンビニ弁当ばかり食べる私之に手作りのご飯を食べさせてあげようと働いている。 「コンビニ弁当でいいのに、どうせ料理下手なんだから」  落胆しながら冷蔵庫の扉を開ける、しかし何も入っていない。  私之はコンビニ弁当で充分だったが、梨之はそうはいかなかった。  明日から一人娘が東京で一人暮らしを始めるのだ、最後くらい美味しい手料理を食べさせてあげたいのだ。
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