グレイシャル ラブ

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汚れない朝がそっと青白いカーテンを染めた。 カーテンの向こうを見つめれば、ガラス越しに見慣れた街が霞んでいる。 水気を含んで重くなった春の空気のせいだろうか。 小さな泣き声を上げながら飛び回る鳥たちが古臭い映画のように煙っていた。 森本裕人は、枕元のペットボトルに手を伸ばした。 「ヒロト君は何人と付き合った?」 白いシーツに身を沈め、うっすらと笑みを浮かべた斎藤リカが不意に聞いてきた。 「三人かな。」 水を口に含み、もとのようにペットボトルを戻す。 リカは目を細め時間を確認すると、僕のペットボトルに手を伸ばし、一口口に含んだ。
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