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―――
「こっちこっちー!」
東町にあるバスケットコートを地元の雲野くん以外場所を知らなかったから、雲野くんの案内で、ゲーセンを出て10分くらい離れた静かな場所にあるバスケットコートに来た。
「ここあんま人来なそう……」
私は周りを見回した。
そのバスケコートは、目立つ場所、いやマル秘スポットと言えるであろう場所にあって、集中してバスケが出来そうだった。
「だっろー?こーんな目立たない場所にあって、コート2面もあんだぜ?すごくね?」
「確かにそれは凄い!」
和泉が目を輝かせた。
「だろ?よっしゃ、碧!1on1やろーぜ!」
雲野くんがコートの隅にガバンと制服のブレザーを放って、槻館くんをコートの中から呼んだ。
「ああ」
槻館くんも同じようにガバンとブレザーをコートの隅に放り出してコートに入った。
「せっかく新品の制服なのに、汚れちゃうよ!あおくん、伶くん!」
和泉の注意が聞こえてるんだか聞こえてないんだか、2人は早速1on1を始めていた。
「もー!バスケバカなんだから」
頬を膨らませて、それから渋々といった様子で和泉は、コートの隅まで行って、槻館くんのブレザーを拾い上げてパタパタと埃を叩いた。
私も和泉の隣に行き、雲野くんのブレザーを拾い上げた。
「別に拾わなくていーぜ?和泉」
「あー、雫ちゃん!ごめん、ありがと!」
雲野くんは私に向かって、自分の頭の上で手を合わせた。私は「いいよ」の意味で手を振った。
その隣で和泉は、槻館くんの言葉に反応してゆっくりと笑った。
その笑顔は今日1日見たことのない、笑ってるけどどこか冷めた雰囲気の笑顔。
それを見た槻館くんは「あ、やべ……」と言って、顔を青ざめさせた。
「何?その態度は。せっかくの人の親切……なんだと思ってんの?」
「……っ」
その光景を見た雲野くんと私は唾を飲んだ。
「…や!ほ、ほらあれだ!あ、後で拾おうと思ったんだよ!ああ、そうだ!」
槻館くんは物凄く必死に弁解をしていた。
雲野くんは嫌がる槻館くんの背中を押して和泉の前へ行かせた。
その間に私は和泉の隣を離れて、雲野くんと2人で少し離れた場所から見ていた。
「ふーん……そう?」
「「「……ゴクッ」」」
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